私の思い出 4

「 獅子舞の練習、頭の上に数字の8を横に描く 」

獅子の故郷新町、一新小学校・西山中学校とあり私たちの仲間はほぼ同校を卒業しています。ですから顔馴染みで気心が知れていました。私より1、2歳年下の方々が主になって練習して居られたかと思います。そうしているうち、私にも獅子舞の練習をやってみないかと話があり手を上げました。身体が大きくなかったので黄色の雌の担当になりました。木板を張り合わせて獅子の形を作り顎の下に突き出た握り棒を手の平で支えて頭の上で振りかぶる事から始めました。まだ笛.太鼓.鉦は別としてただ青く塗られて、口がぱくぱく上下する練習用の獅子頭を振る事に明け暮れました。教えられたのが頭の上に数字の8を横描きする様に振りなさいと言われ、大きい空のビール瓶を持たされて振り方を指導されました。これはどうしてかと云うと、獅子頭の髪の毛が左右に大きく振れて美しい流れとなり獅子がいかにも生きている様子を表しているからと云う事でした。

練習を終えて家に帰り、ビール瓶を持ち、8の字を描く練習をした事を覚えています。獅子頭を右上、左上へ上下させるだけでは髪の毛がストンストンと肩の上に落ちるだけで獅子の勢いがなくなるそうです。練習が終わり家に帰ってからも我が家でビール瓶を振り回したものでした。練習は例年8月20日から始まりましたが、夕方になっても気温は下がらず暑い中での練習でしたが、皆さん意欲的に舞の技を習得するため懸命だったと事を思い出します。8の字を描くためにそれぞれ工夫を凝らし、お互いにダメ出しを交わしたり、獅子頭を頭上に持ち上げる前に足のすね辺りをもう一方の足で軽く蹴って上げる仕草を、この様にするとか、また舞始めのシーンで獅子が足つま先を舐める様な動作を、猫が足を舐める様子を持ち出したりして、ああだ、こうだとお互いの考えを出し合って練習に励んいました。練習後は近くの銭湯(くすり湯・松の湯)で汗を流し、安酒で一杯飲りながら、そこでまた舞のやり方についてああだ、こうだと話が持ち上がり意見を戦わせていました。家に帰り着くのは夜中12時は過ぎていたと思います。

新町獅子保存会顧問 山本信夫(82)